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2007-06-24

シナリオ『電影マニアックス』5


22   フェードインしてくると。──
          ある神社の境内、(何かの物陰から映しているような映
          像で) 遠くの方に佇む髪を金髪に染めた少年の姿が見え
          る。
          剣道具を背負った少女が来る。
          テロップ。──『 1996 初夏 ミチロウとユミコ 』。
          顔を真っ赤にして真剣な表情でユミコに何かを喋ってい
          るミチロウ。
          声は聞き取れない。
          ユミコ、うつむき黙って聞いていたのが、ふと面を上げ
          ミチロウを見つめると首を横に振る。
          ミチロウ、途端に落胆した様子。
          一言何かを言うとミチロウに背を向けその場を去るユミ
          コ。
          呆然とするばかりだったが急に何かを思い出したように
          辺りを見回すミチロウ。
ミチロウ「(何かを見つけて)!」
          ミチロウ、怒りの気配で画面に近寄って来る。
ミチロウ「やめろ!」
          ──と言って手を伸ばしてきたので、画面は逃げて乱れ
          た様子を見せる。
ケンイチの声「ミチロウ、ま、待てって」
ミチロウ「うるせー!」
ケンイチの声「分かるだろ、記録だよ。コレだってさ、お前が生
     きてるってさ、お前がこの世に産まれてきた証っていう
     さ‥‥」
          逃げながらも迫って来るミチロウを捉えていた画面は
          (ケンイチが転んだので)乱れる。
          (ケンイチが手を離したので)不安定な構図になりながら
          も止まった画面の中にミチロウの足下が大きく映ってい
          る。
          ミチロウの足、苛立たしげに画面に向かって砂を蹴散ら
          す。

23   ユミコの日常・モンタージュ
          登校途中、友人と楽しそうに歩くユミコ。
            ×          ×
          剣道場で、稽古するユミコ。
            ×          ×
          ジャージ姿で犬を連れランニングするユミコ。
          立ち止まり汗を拭く。
          ユミコ、(カメラに)気付き軽く会釈して「あ、こんにち
          は」。
            ×          ×
          体育の授業中、ソフトボールで、バッターボックスに立
          つユミコにズームアップすると、背後でこちら(カメラ)
          の方を指差しひそひそ話をしている女子たちの姿が分か
          る。
          ユミコ、その女子たちに声を掛けられ、一旦はそっちの
          方を見るが、こちら(画面の方)を向くと困った様子でバ
          ットを置く。
          以上の映像にケンイチのナレーションが聞こえて来る。
ケンイチのナレーション「どうやら私が日々ユミコちゃんの姿を
     追っていたことがばれたようだ。これもミチロウの成長
     記録の一旦に過ぎないのだが‥‥この気持ちはなかなか
     通じない。ミチロウはユミコちゃんに振られたのが私の
     せいだと思い込んでいる」

24   或る不動産屋
          (何かの物陰から撮っているような映像で)店内で昼行灯
          のようにぼけっとしたケンイチの姿が映っている。
          若い女子事務員にコピーを頼まれるが、受け取った紙束
          を床にばらまいてしまうケンイチ。
          女子事務員、呆れ果て大きなため息をつきケンイチを無
          視して紙を拾う。
          気弱な笑みを浮かべてそれを手伝うケンイチ。 
          ケンイチが拾い終わった紙を奪い取ると自分でコピーす
          る女子事務員。
          ケンイチ、自分のデスクにつき再び昼行灯。
ミチロウのナレーション「コレがアイツの全てだ。仕事場では相
     手にされないもんだから、家族をおもちゃにして喜んで
     る。ずっとそうだった!愛情!?ふざけんな!」

25   ミズシマ家・階段 〜 ミチロウの部屋前廊下
          主観の映像が階段を上っていき、荒々しい文字で『入室
          禁止!』と貼紙のされた部屋の前で立ち止まる。
          突然ドアが開き、目つき険しくミチロウが画面を睨みつ
          ける。
ミチロウ「うぜぇんだよ!」
          力任せにドアを閉めるミチロウ。
ケンイチのナレーション「私はいつだってミチロウのことだけを、
     タエコのことだけを思ってきた。しかし、タエコも最近
     は‥‥」

26   タエコの日常・モンタージュ(全て隠し撮りされた映像)
          老人福祉センターで、老人Aの運動の手伝いをしている
          タエコ。
            ×          ×
          巡回入浴車で、老人を風呂に入れているタエコ。
            ×          ×
          薬局で、メモ片手に成人用おむつを買っているタエコ。
          ──などなど。
ミチロウのナレーション「昔付き合っていた男の写真をいつまで
     も隠し持っている女。ずるい生き物。それが俺の母親だ。
     ボランティアをしているのだって息苦しい家庭から、情
     けないアイツから、俺から逃げる口実に過ぎない。まっ
     たくの偽善」 
         
27   ミズシマ家の生活素描
          台所のシンクに溜まった洗ってない食器。
          テーブルに食い散らかしたままのコンビニ弁当の空き容
          器。
          ゴミが溢れているゴミ箱。
          洗ってない洗濯物の山。
ケンイチのナレーション「タエコ‥‥お前は何をしてる?他人の
     面倒をみてる場合じゃないだろう。心配じゃないのか?
     家族のことが、ミチロウのことが‥‥」

28   町の風景の点描
          駅の改札から吐き出される通勤通学の人々。
          コンビニの前でたむろする小学生たち。
          退屈そうな警察官。
          八百屋の前で井戸端会議に興じる主婦たち。
          風になびく青々とした稲穂。
          夕陽に染まった空。
          ──ありふれた田舎の日常風景。
ミチロウのナレーション「あまりにもありふれていて退屈な毎日。
     嘘臭い。こんな町実在していいのか?これって、本当は
     みんなが平和な毎日っていうのを演じているだけじゃな
     いのか?」

29   中学校・屋上
          どこまでも続く青い空を映した印象的な画面の下から   
          ミチロウがフレームインして。──
ミチロウ「脳みそがかゆい」

(つづく)  


    



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