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2008-11-27

シナリオ 存在の深き眠り 6

◇ あるスーパーマーケット・内(夕)
          主婦に混じって学生服姿のたけしと克夫がショッピング
          カートを押している。
  たけし  「本当に作れんの?チンジョーロースなんて」
  克夫   「任せろ。俺様、フランス仕込みの一流シェフよ!」
  たけし  「あのぉ‥‥チンジョーロースって中華なんですけど」
  克夫   「細けぇな、タケは!一つ一流なら全てにおいて一流なのよ。分
       かってないなぁ、チミは!」
  たけし  「何それ!?意味不明」
          克夫、鼻歌まじりに手当たり次第食材をカートに放り込
          む。
          ひとりごちるたけし。

◇ たけしの家・リビングダイニング(夜)
          克夫がテレビゲームをする横で料理しているたけし。
  克夫   「ゲーム、古すぎ。早くプレステ2買ってもらえよ」
  たけし  「話しかけるなよ!」
  克夫   「せいぜい頑張ってくれ」
  たけし  「大体何でこうなるわけ?」
  克夫   「細けぇっての!」
          テレビゲームをやめる克夫。
  克夫   「一流は全て弟子にやらせるのよ」
  たけし  「何それ!?」
  克夫   「ピーマン切ったじゃん!俺」
  たけし  「っていうか、そういうのアリ?」
  克夫   「あり、あり!」
          克夫、たけしの背後に立ち料理をする様を観察。
  克夫   「塩多くねぇか?」 
  たけし  「あー、うざい!!」
  克夫   「(笑って)何かすることねぇ?」
  たけし  「(少しイライラして)もーう、じゃ、じゃぁ、皿、皿とって。
       もう出来るから」
  克夫   「一流シェフに皿を用意させるとは生意気な!」
  たけし  「言ってれば!?」
  克夫   「(笑って)言う、言う!」
          テーブルの上にあった皿をたけしに渡す克夫。
          たけし、慣れない手つきで中華鍋の中身を皿に移す。
  克夫   「見た目はうまそうだな」
          言うや克夫、つまみ食いをするが、すぐさましかめっ面
          になり情けない顔でたけしを見る。
  たけし  「マジ!?」
          克夫、頷き口の中のモノを吐き出す。
  克夫   「何でこんな味になるわけ!?」
  たけし  「マジ?マジ!?」
          あわてて料理をつまんで口に入れるが。──料理は、ま
          ずい!──すぐに情けない顔になって克夫を見るたけし。
          克夫、無言で頷くだけ。
                 ×          ×
          カップ麺をすすっているたけしと克夫。
  克夫   「(食べ終えて)カップ麺とはいえ、やっぱ本家吉村屋のラーメ
       ンは美味いな。食べたかったんだ、これ」
  たけし  「‥‥良かったな。食べれて」
  克夫   「これもタケのおかげ?」
  たけし  「慰めてんの?」
  克夫   「別に」
  たけし  「慰めになってないよ」
  克夫   「あのさ、タケ‥‥」
  たけし  「何?」
  克夫   「‥‥何でもない」
  たけし  「あー、ウザい!言いかけてやめるなよ!」 
  克夫   「だからぁ‥‥そうだ、カラオケ行く?」
  たけし  「ごまかした」
  克夫   「違うよ」
  たけし  「ま、どうでもいいけどさ」
          克夫、少し考えてポケットから煙草を出す。
  克夫   「まだ、親帰ってこねぇべ」
  たけし  「吸ったことない」
  克夫   「何にでも初めてはあるさ。どうよ?」
          ぐいっと煙草を差し出し微笑む克夫。
  たけし  「(ちょっと考えて)」
          たけし、煙草をとってくわえるので、克夫、すかさず火
          をつけてやる。
          ぎこちないが思い切り煙を吸うたけし。
  克夫   「おっ!?」
          たけし、煙を吐き出す。
  克夫   「むせないねぇ」
          気を良くしたたけし、再び煙を吸うと今度は思いっきり
          むせる。
  克夫   「やっぱね(笑う)」
          その時、玄関のドアが開き人が入ってくる気配。
          慌ててたばこの火を消し、窓を開け、煙を追い出すたけ
          しと克夫。
          玄関の方からは、酔った様子で「帰ったぞー!」と、怒鳴
          る正樹の声が聞こえる。
  たけし  「また酒呑んでる」

◇ 同・玄関(夜)
          靴を脱ぐのもそこそこに上がりがまちで酔いつぶれてる
          正樹。
  正樹   「ここはどこだ?ああ、我が家かぁ‥‥だけど誰もいませんね
       ーっと(適当に節をつけて自棄気味に歌って)こんなはずじゃな
       かったのに」
          たけしと克夫来るが、正樹を無視して出ていこうとする。
  正樹   「オイ!息子よ!!(克夫を見て)あれっ?息子が二人!?」
  克夫   「あ、俺、友達の峰岸っス」
  たけし  「いいよ、放っておけよ」
          正樹、いきなり直立して。──
  正樹   「あっ、峰岸君ですか。いつもいつもたけしが世話になってま
       す」
          ──と、必要以上に深々とおじぎをしたかと思ったら、
          たけしを見据えて。──
  正樹   「オイ、たけし!放っておけとはどんな言い種だ?お前、俺は親
       だぞ!?」
  たけし  「(克夫に)行こう」
  克夫   「どうもお邪魔しました」
  正樹   「(ヘラヘラ笑い)あ、こりゃ、ご丁寧に。お邪魔されました」
          たけし、「もういいってば」と、正樹に会釈する克夫を
          促し出ていく。
  正樹   「(大声で)たけし!たけし!こんな時間にどこ行くんだ!?オーイ、
       不良になっちゃうぞ!!」

◇ 住宅街の道(夜)
          肩を並べて黙々と歩くたけしと克夫。
  克夫   「タケんとこも面倒臭いな」
  たけし  「‥‥別に」
          二人、歩く。
          黙々と歩く。
          歩く、歩く、歩く。
          ふと克夫がたけしより前を歩く。
          たけし、負けじと早足になって克夫を追い抜かす。
          再び克夫がたけしを追い抜いて。──
          二人、追い越したり追い越されたりしているうち走り始
          める。
          走る。
          走る。
          全速力で、疾走する。
          いつしか二人の頬は笑顔に緩んでいる。

◇ カラオケボックス・内(夜)
          克夫が盛り上げ、ノリのいい曲を絶唱するたけし。
          歌い終え喉を潤すたけし。
  克夫   「なぁ、これからドンキ行かねぇ!?」
  たけし  「?」

◇ 終夜営業のディスカウントショップ『ドンキホーテ』・店内(夜)
          所狭しと食料品、家電製品、洋服など、種類問わず雑然
          とモノが陳列された迷路のような店内を行くたけしと克
          夫。
  克夫   「タケ、ここのモノってどうしてこんな安いか知ってる?」
  たけし  「知らない」
  克夫   「バッタモンだから」
  たけし  「バッタモン?」
  克夫   「バッタモンも知らねぇの?」
  たけし  「うん」
  克夫   「倒産した店とかからほとんどタダみたいな値段で買い取った
       モノのこと」
  たけし  「ふーん」      
  克夫   「だから安いんだよ」
  たけし  「あ、プレステ2!」
  克夫   「(ニヤリと笑い)欲しいよな?」
  たけし  「そりゃぁ‥‥」
          克夫、何のためらいもなくプレイステーション2の箱を
          抱える。
  克夫   「(小声で)レジに行くような振りしろ!」
  たけし  「えっ!?ちょっと‥‥」
  克夫   「この店のモノだってただで仕入れたようなモノばっかりなん
       だ」
  たけし  「(察して)ヤバいって」
  克夫   「大丈夫だって」
  たけし  「箱が大きすぎるよ」
  克夫   「二人だと怪しまれるから、タケ、先出て待ってて」
  たけし  「やめようよ」
  克夫   「(ボソッと)‥‥タケ、色々あるかもしんないけどさ」
  たけし  「何?」
  克夫   「(照れ笑いを浮かべ)元気出せよ」
  たけし  「えっ!?」
  克夫   「早く!」
          克夫、軽くたけしを蹴っ飛ばして先に行くよう促す。
  たけし  「えっ?何、何!?」
  克夫   「(小声で)行け!」
          たけし、克夫の迫力に押され渋々店を出ていく。

◇ 同・表(夜)
          少し離れた物陰で落ち着かない様子で店の出入り口辺り
          を見ているたけし。
  たけし  「カッちゃん‥‥」
          店から克夫が出てくる。
          『捕まらなかった!』と、たけしがホッとしたのも束の間、
          背後から警備員が現われ克夫に声をかける。
  たけし  「!!」
          克夫、猛然とダッシュしようとするが、すぐに体格のい
          い警備員に捕らえられてしまう。         
  たけし  「!?」
          克夫、四肢を滅茶苦茶に動かして激しく暴れる。
  たけし  「カッちゃん!!」
          怖くて動けないたけし。
  たけし  「!?」
          刹那、たけしは克夫と視線が合った気がした。
          たけし、この刹那が永遠に感じる。
          克夫はたけしを睨み付けてるように見える。
          たけし、正視出来ず目をそらす。 
          たけしの耳に克夫の吠えている声が聞こえる。
          たけし、唇を噛むばかり。
          克夫、抵抗虚しく体格のいい警備員の前ではどうにもな
          らない。
  たけし  「‥‥」
          克夫、ズルズルと引きずられあっという間に店内に連れ
          て行かれてしまう。
  たけし  「カッちゃん‥‥」
          店に入っていこうとして躊躇するたけし。
          たけし、どうにもすることも出来ず地団駄さえ踏めない。
          立ち尽くすばかり。


(つづく)

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