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2008-12-06

シナリオ 存在の深き眠り * あとがき風味♪

ひさしぶりにこの『存在の深き眠り』を開いてみた。
サンダンス・NHK国際映像作家賞の二次選考に落選してから、
ホントに久しぶりに自作を読んでみた。

「中学生は生き生きと書かれてますよね」

このコンクールの二次予選は面接なのだ。
つまり、ボクは面接で落とされたわけなんだけど(苦笑)
それはともかく、上記のセリフは、その面接の時に審査委員が言ったものだ。

正直、このセリフはピンと来なかった。
「はぁ……」って感じ。

このシナリオを書こうとした時に、まず念頭に置いたのが、

「夢のような話を描きたい」
「自分に無理ないものを書こう」
(無理のないものって……ボクの精神年齢はきっと中学生くらいだから、そんなもんかなぁ?)
「自分が面白いと思えるものだけ書こう」

この3点だった。

物語の中には、イジメや自殺が扱われている。
だけど、ボクはことさら問題作を書いたつもりはない。

ありていに現実を考えた時に、これらの事柄は、
ごくフツーにそのへんに転がっている出来事だからだ。

自分でも意識してなかったが、時間を経て自作を読んでいると、
いくつか気づいたことがある。

ひとつは、劇中の人々は皆が一様に何かの問題を抱えていて、
悩んだり迷ったりしている。
それは、大人子供に限らずだ。

ボクは、ただ自分が「面白い」と思えるものだけを描いたつもりなのだが、
意識せずにそれらを選んでいたということが、我ながら興味深かった。

現代を描こうとした時に、少なくともボクは、それらは避けて通れないことなのだろうと
思っているということを再認識した思いだ。

軽い自己発見?っていうのかな???

もうひとつは、ボクは、ここに出て来ている人々はとても「好き」だということだ。
自作の登場人物を「好き」だなんていうと、ちょっとナルシズムっぽいけどwww


『存在の深き眠り』は、出来損ないたちに対するオマージュである。

ボクは、完璧な人間なんて、存在しないと思っている。
だけど、完璧でないからこそ、人は愛すべきものなのだ。

もし、完璧なヤツなんていたとしたら、ちょっと気持ち悪いと思わない?

だから、完璧など求めてはダメだと思うのだよね。
そんなことしたら息苦しくなる。

完璧じゃないからこそ、人は人たり得るのだよ。
そして、愛おしいのである。

そんな思いで描いてたということも改めて認識して、
ちょっと自分に酔ったw(嗚呼、ナルシズム。。。wwww)

ま、だいぶ脱線してしまったが、
今回、このブログにアップするという行為で、色々な発見を出来た。

そんな機会を作ってくれたキミに感謝をして、
『あとがき風味♪』に代えようw

ありがとう!


P.S. 新作も現在構想中だ!!! (腐ったらおしまいだぜ!!)

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2008-12-01

シナリオ 存在の深き眠り 10

◇ ××中学校・職員室
          小島に学級日誌を渡している顔に絆創膏を貼ったたけし
          と亜梨沙。
  小島   「もう教室には誰もいないか?」
  亜梨沙  「高橋君と佐田さんの鞄がありますけど‥‥二人とも部活だか
       ら」
  小島   「鞄は部室に持って行けって言ってんのになぁ‥‥」
  たけし  「戸締まりはしましたから」
  小島   「分かった。じゃぁ、君たちももう帰りなさい。ご苦労さん」
  亜梨沙  「はい」
          たけしと亜梨沙、出ていこうとする。
  小島   「中原‥‥」
  たけし  「(振り返って)はい」
  小島   「あ、いや、別に‥‥気をつけてな」
  たけし  「はい?」
  
◇ 同・校門
          来るたけしと亜梨沙。
  たけし  「じゃ、俺こっちだから」
  亜梨沙  「うん。また明日」
  たけし  「じゃぁな」        
          亜梨沙に背を向け去るたけし。
          亜梨沙、たけしと逆方向に行こうと歩き出すがふと振り
          返り。──
  亜梨沙  「(たけしの背に向かって)ねぇ!」

◇ 運河沿いの道
          肩を並べて歩くたけしと亜梨沙。
  亜梨沙  「さっきからずっと黙ったままだね」
  たけし  「別に‥‥喋ることないから」
  亜梨沙  「‥‥峰岸君のお父さんの裁判、もうすぐだね」           
  たけし  「‥‥知ってる」
  亜梨沙  「峰岸君‥‥ずっとお父さんから虐待されてたって」
  たけし  「聞いた」
  亜梨沙  「私‥‥」
  たけし  「‥‥」
  亜梨沙  「私、峰岸君のこと好きだったのにそんなことにも気付かなか
       った。ずっと知らなかった」
  たけし  「俺だって‥‥」
  亜梨沙  「‥‥」
  たけし  「俺だって全然知らなかった」
  亜梨沙  「そう‥‥」
          二人、それきり黙ってしまい黙々と歩く。

◇ 岸壁
          遠くに港を行き交う貨物船が見える。
          防波堤の上に少し離れて座っているたけしと亜梨沙。
  亜梨沙  「最近、みんな松本君のことイジメなくなったね」
  たけし  「飽きたんだろ」
  亜梨沙  「‥‥ねぇ、何でそんなに離れて座るの?」
  たけし  「うるせーな。どうだっていいだろ」
  亜梨沙  「‥‥」
          亜梨沙、悪戯っぽい笑みを浮かべるとたけしに寄り添う
          よう座る。
  たけし  「やめろよ」
          すぐさま離れるたけし。
  亜梨沙  「だって寒いんだもん」
          亜梨沙、すぐにまた寄り添う。
          そんなことを何回か繰り返し。──
  たけし  「いい加減にしろよ!」
  亜梨沙  「やだ!」
  たけし  「犯すぞ!」
  亜梨沙  「‥‥いいよ」
  たけし  「えっ!?」
  亜梨沙  「いいよ。犯しても」
  たけし  「‥‥バカ、冗談だよ」
  亜梨沙  「‥‥冗談なんかじゃない」
          亜梨沙、言うやたけしに抱きつきキスをする。
  たけし  「!?」
          たけし、目を白黒させて戸惑うばかり。
          きつく、きつくたけしを抱き締め唇を離さない亜梨沙。
  たけし  「や‥‥やめ、やめろー!」
          亜梨沙を突き飛ばすたけし。
          亜梨沙、突き飛ばされた姿勢のまま顔だけを向け、たけ
          しをきっと睨む。
  亜梨沙  「私、まだ、峰岸君のこと好きなんだから!」
  たけし  「!?」
  亜梨沙  「(瞳を涙で一杯にして)ホントなんだから」
  たけし  「(口の中で)ば‥‥バカやろう」
  亜梨沙  「嘘じゃないんだから!」
  たけし  「(ハッキリと)バカやろう!!」
  亜梨沙  「バカじゃないもん!」
          たけし、突如、奇声を上げると走り出す。
  たけし  「俺のバカやろう‥‥」
          走る、走る、走るたけし。
  たけし  「(叫び)みんな‥‥バカやろう、だ!!」
          たけし、海へ向かって思い切りジャンプ。
          ──次の瞬間、全ての時間が止まる。

◇ 海中
          たけし、手足をバタバタさせて、水の中でもがているの
          か‥‥泳いでいるのか‥‥。

◇ イリュージョン
          海面に。──
          顔を出すたけし。
          あの夏の日のたけしだ。
  たけし  「サザエ、ゲーット!!」
          一気に沸き立つ岩場にいた克夫、健吾、敏之、宏明。
          たけし、笑顔になって克夫たちに向かって泳ぎ出す。 
          
◇ 銀杏並木のある舗道(夕)
          落葉で黄金色に染まった舗道を歩いているずぶ濡れのた
          けし。
          歩行者用の信号が青から赤に変わり、たけしは足を止め
          る。
          たけし、ふと足下に目がいく。
          足下には、一枚の銀杏の葉がモソモソと動いている。
  たけし  「?」
          よく見てみると動いている銀杏の葉はその葉をまとった
          蓑虫。
  たけし  「‥‥」
          たけし、その蓑虫を踏み潰そうとして。──
  たけし  「‥‥」
          ──ふと思いとどまる。
          蓑虫を拾い上げるたけし。
          たけし、拾い上げた蓑虫をじっと見つめているうち、不
          意に涙が込み上げてくる。
  たけし  「‥‥あれ!?」
          自分でも予想していなかった涙に戸惑うたけし。
          涙は、拭っても拭っても次から次へと溢れてくる。
  たけし  「何で?」
          涙を拭うのを諦めそのままにして立ち尽くすたけし。
          その時、一陣の風が吹きたけしの頬を撫でていく。
          足下の落葉がふわっと舞い上がり。──
          ──世界は今、たけしだけのためにある。
          舞い上がった落葉はそのまま風のベールに織り込まれ、
          たけしの周囲を黄金色に覆い尽くす。
          風と落葉のベールに戸惑うたけし。
          たけし、ふと気を楽にして風と落葉のベールに身を任せ
          る。
          そのまま何かに誘われるようにゆっくりと歩を進めるた
          けし。
          歩行者用の信号は赤のまま。──
          画面、フェードアウト。
          間。
          真っ暗な画面に。──
          声が聞こえてくる。
  声    「世界はワンダーランドだ」
          フラッシュ。──
          歩行者用の信号が折れ曲がり、赤になったり青になった
          り不規則な点滅をしている。
          暗転。 
  声    「一秒先のことは分からない」
          フラッシュ。──
          急ブレーキの痕跡。
          道路からはみ出し横転して白い煙を上げているトラック。
          暗転。
  声    「そして、誰もが皆何を考えているかなんて、何を感じている
       かなんて分からない」        
          フラッシュ。──
          イメージが、ものすごい速さで次から次へ浮かんでは消
          えていく。
          ──花火をしているたけしたち。
          ──全身をガムテープでぐるぐる巻きにした邦正を紐で
          縛り、自転車で引っ張っているたけし。
          ──身体の一部に火がついたホームレスの男を見て笑っ
          ているたけしたち。
          ──プロレスごっこをしているたけしたち。
          ──亜梨沙を見つめるたけし。
          ──笑顔で全力疾走するたけしと克夫。
          ──荷物を運び出し日、家を去る時の正樹の後姿。
          ──ピアノを弾いている亜梨沙。
          ──邦正の陰茎をしごいている敏之。
          ──料理をしているたけしをちゃかす克夫。
          ──邦正の描いた漫画に感心するたけし。
          ──晴彦に水を飲ませている邦正。
          ──ケーキの箱を床に叩き付ける瑞穂。
          ──敏之を殴っているたけし。
          ──たけしを無視する克夫。
          ──警備員に捕まりもがいている克夫。
          ──たけし、克夫、邦正、敏之、宏明、健吾、正樹、瑞
          穂、亜梨沙、みゆき‥‥みんなの笑顔、泣き顔、怒り顔、
          真面目な顔。
          様々なイメージが溢れ。──暗転。
  声    「ただこれだけは分かる。人は誰もが弱い生き物だ。だから僕
       らは松本をイジメて虚勢を張り強がってみせた。でも、いつだ
       って本当に強いのは松本みたいなヤツの方だ」
          フラッシュ。──
          医師、看護婦に囲まれたストレッチャーにのせられ運ば
          れる血だらけのたけし。
          暗転。
          フラッシュ。──
          屋上から飛び下りる克夫。
          暗転。
  声    「みんなは、あのクソ親父から虐待を受けていたからカッちゃ
       んが自殺したって言うけど、本当にそれだけで人は自殺出来る
       のか?僕はそう思わない。人は確かに弱い。けど、だからとい
       って人の気持ちはそんなに簡単なモノでもない。あのクソ親父
       にしたって最初からクソ親父だったわけがない。大体僕らとあ
       のクソ親父とどこがどう違うと言うんだ?カッちゃんの本当の
       気持ちなんて誰にも分からない。それは、永遠の謎で、僕らに
       課せられた宿題だ」

◇ ある病室
          テレビのバラエティ番組を見ている中年男の後姿。
  声    「ただ一つだけ想像のつくことがある。確信は出来ないけど、
       カッちゃんがあの日から僕を無視したのは、格好良く万引きを
       するはずが、しくじって恥ずかしかったからだと思う。そう思
       いたい」        
          中年男、気配に振り返り狐につままれたような顔になる。
          中年男は。──少し老けた感のあるたけしの父・正樹。
          次に、正樹は驚きに目を見開き涙を流し嗚咽を漏らす。
  声    「お父さん‥‥どうしたの?」
  正樹   「どうしたってお前‥‥たけし」
          ベッドの上にいるのは20歳前後の痩せた青年。
          青年、自分の手を見つめる。──じっと見つめる。
  青年   「僕‥‥」
          ヨロヨロと青年に近付く正樹。
          正樹、青年を力一杯抱き締める。
  正樹   「たけし‥‥良かった‥‥良かった、たけし」
  青年   「僕は‥‥」
  正樹   「たけし‥‥たけし‥‥」
          戸惑うばかりの青年。──たけしを飽くことなく抱き締
          め続ける正樹。
  たけし  「お父さん‥‥」
  正樹   「何だ?」
  たけし  「何だか凄くお腹が減ったよ」
          正樹、涙を拭い。──
  正樹   「そうか‥‥そうか‥‥分かった。すぐに美味いモン買ってく
       るよ。すぐにだ」
          ──そう言って再びたけしを抱き締める正樹。
  たけしの声「こうして僕は8年の眠りから目を覚ました」

◇ ある墓地
          墓前に手を合わせているたけし。
          その横に立っている正樹。
          墓参を済ませ立ち上がるたけし。
  正樹   「本当は離婚してるからな、父さんが母さんの‥‥君の母さん
       の墓参りなんてな、しちゃいけないと思うんだけど」
  たけし  「そんなことないでしょ」
  正樹   「まぁ、たけしの全快報告だ。許してくれるだろ」
  たけし  「‥‥でも、何だか変な感じだ」
  正樹   「何が?」
  たけし  「だってさ、僕にとってはお父さんとお母さんが離婚したのは
       つい一か月ほど前のことなんだよ。それが、お母さんが死んで
       もう3年も経ってるなんてさ」
  正樹   「そうかな‥‥」
  たけし  「そうだよ」
  正樹   「‥‥そうだな」
  たけし  「何だか‥‥」
  正樹   「何だかなんだ?」
  たけし  「何て言うか‥‥」
  正樹   「夢のようか?」
          頷くたけし。

◇ ××中学校・校庭
          誰もいない校庭の真ん中に立っているたけし。
          たけし、懐かしむように辺りを見回している。
  たけしの声「父に頷いてすぐ僕はこれが現実なんだと思い知った。だけど、
       その現実を実感した途端、カッちゃんのことや、中学校時代に
       あった全ての出来事が夢のように感じた。事故に遭い眠ってい
       る間、僕は、長い長い夢を見ていたのだろうか?」
          一陣の風がたけしの頬を撫でる。
          ふと足下を見るたけし。
          足下には、銀杏の葉を纏った蓑虫が動いている。
  たけしの声「夢みたいな現実。現実みたいな嘘。嘘みたいな記憶。いつだ
       って、真実に境界線はなく曖昧だ。でも、一つだけハッキリし
       ていることがある。それは‥‥」
          たけし、面を上げ大きく深呼吸をして空に向かい。──
  たけし  「(大きな声で)みんなー、元気かぁー!」
          たけしの声が誰もいない校庭にこだまする。
  たけし  「(更に大きな声で)元気にしてるかぁー!!」

◇ 同・屋上
          縁に立った中学生のたけしたちが下を覗き込んでいる。
  克夫   「何か言ってるぞ」
  たけし  「シカト、シカト」
          小島が校庭で屋上に向かって何かを叫んでいるがよく聞
          こえない。
          たけしたち、危うい足取りで縁を歩き始める。
  たけし  「カッちゃん、ぜってぇ押さないでよ」
  克夫   「なーに、ビビってんだよぉ」
  たけし  「ざっけんなってーの!」
          やいのやいの言いながら縁を歩き続けるたけし、克夫、
          健吾、敏之、宏明。
          そこに、「あーっ!」と叫ぶ声が聞こえて驚きよろけるた
          けし。
  たけし  「ざっけんじゃねぇ!落ちちゃうじゃねぇか!!」
          五人から少し離れたところでガムテープで全身をぐるぐ
          る巻きにされ立っていた邦正が空を指し。──
  邦正   「UFO‥‥」
  たけし  「えっ!?」
          たけしたち五人、一斉に邦正が指した空を見るが。──
          そこにあるのは青い空とポッカリ浮かぶ雲だけ。
  克夫   「テメェ、フカシて(嘘ついて)んじゃねぇよ!」
          たけしたち、柵を乗り越え邦正のもとへ駆け寄る。
          あとには空だけが残される。
  たけしの声「‥‥それは、僕は、いつだって今を生きているということだ」
          空の片隅、小さくUFO(?)が見えてすぐ消える。


                ── 了 ──

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2008-11-30

シナリオ 存在の深き眠り 9

◇ 街の風景の点描

◇ たけしの家・表
          2トントラックに荷物を積み込んでいる加藤(28)と杉山
          (25)。

◇ 同・リビングダイニング
          段ボール箱に入れられた荷物が点在している。
          努めて平静を装いいつもと変わらぬ調子でテレビゲーム
          をしているたけし。
          加藤、来て段ボールを持ち上げると。──
  加藤   「(奥に向かって)課長!これもトラックに積んじゃっていいんで
       すかぁ!?」
          正樹、奥から顔を出し。──
  正樹   「ああ、それかぁ‥‥頼む!」
  加藤   「はい!」
          加藤、チラッとたけしを気にしてから荷物を運び出す。
          加藤と入れ替わりに来た杉山、荷物を持つとふとたけし
          の横で足を止め。──
  杉山   「君も大変だな、これから」
  たけし  「(チラッとこなしただけで)別に‥‥」
          苦笑いを浮かべ行く杉山。
          たけしの携帯電話が鳴る。
          番号は非通知になっている。
  たけし  「?」
          たけし、「はい」と電話に出るがすぐに切れてしまう。
  たけし  「??」

◇ ××中学校・廊下
          人気がなく静まり返った片隅に携帯電話を持った克夫が
          いる。
  克夫   「‥‥」
          克夫、携帯電話をポケット入れると静寂を縫うように歩
          く。

◇ たけしの家・表
          加藤と杉山が乗り込んだトラックの横に立っている正樹。
  加藤   「じゃぁ、先に行ってますから」
  正樹   「悪いな。変なこと頼んじゃって」
  加藤   「気にしないで下さいよ」
  正樹   「ホント、すまない」
  杉山   「じゃ、課長、荷物下ろしときますんで」
  正樹   「頼む」
          軽く挨拶をしてからトラックを走らせる杉山。
          正樹、見送ってから家に入って行く。

◇ ××中学校・屋上
          克夫、縁を歩いている。
          歩く、歩く、歩く克夫。
          克夫、何の前触れもなく突然飛び下りる。

◇ たけしの家・リビングダイニング
          ピザを食べているたけしと正樹。
  正樹   「たけしと最後の晩餐がピザとはな‥‥」
  たけし  「おいしいよ」
  正樹   「そうだな」
          黙々と食べる二人。
          間。
  正樹   「‥‥お母さんと一緒でいいのか?」
  たけし  「お母さん、女だからね」
  正樹   「そうか‥‥」
  たけし  「あの‥‥」        
  正樹   「何だ?」
  たけし  「(首を横に振って)なんでもない」
  正樹   「‥‥そうか」
  たけし  「一生会えなくなるわけじゃないじゃん」
  正樹   「(苦笑して)まぁな、そうだけどな」
  たけし  「そうだよ」
  正樹   「でもなぁ、違うんだよなぁ」
  たけし  「そうかな?」
  正樹   「あーあ、何でこんなことになっちゃったんだかなぁ」
  たけし  「こっちが聞きたいよ」
  正樹   「一生懸命に働いてただけだったのになぁ」
  たけし  「‥‥」
  正樹   「この家だってな、お母さんを喜ばせようと思って無理したん
       だ」
  たけし  「知らないよ」
  正樹   「(独り言のように)それがなぁ‥‥どこでどうすれ違ったかな
       ぁ」
  たけし  「‥‥」
  正樹   「‥‥たけし」
  たけし  「何?」
  正樹   「父さん、よく分からないんだ」
  たけし  「何が?」
  正樹   「‥‥人は何のために生きてるんだ?」
          正樹、突然、込み上げてくるものを押さえ切れず口元を
          押さえるとたけしの目も気にせずに嗚咽を漏らす。

◇ 同・表(夕)
          出て来るたけしと正樹。
  正樹   「(立ち止まり)ここでいいよ」
  たけし  「でも‥‥」
  正樹   「恥ずかしい」
  たけし  「そう?」
  正樹   「‥‥お母さんは今日も遅いのかな?」
  たけし  「さぁ‥‥」
  正樹   「じゃぁな、元気でな」
  たけし  「うん」
          力のない笑みを浮かべると踵を返し行く正樹。
          トボトボと歩く正樹の後姿を見つめるたけし。
  たけし  「お父さん!」
          正樹、振り返らずに軽く手を挙げるだけ。
  たけし  「‥‥」

◇ 同・リビングダイニング(夕)
          薄暗い室内にたけしの携帯電話が鳴っている。

◇ ある寺・境内(夜)
          克夫の葬儀が営まれている。
          しめやかに続く学生たちの葬列の中にいるたけし。
          亜梨沙とみゆき、すすり泣き焼香をしている。
          亜梨沙、焼香を終えると全身の力が抜けてしまい、みゆ
          きに抱えられるようにしてその場を辞す。
          焼香はたけしの順番になる。
          祭壇の前に座っている親族たちに一礼するたけし。
  たけし  「?」
          たけし、会葬者から一番近い席に座っている中年男(克夫
          の父・雄二・45)に目がいく。
          雄二は、妙に落ち着きがなく貧乏揺すりをしていたかと
          思ったら、時計を見たり会葬者にお愛想の笑みを浮かべ
          たりして、明かに不自然で挙動不審。
          たけし、それが気になるが焼香を終わらせる。
          雄二、たけしが焼香を終えると同時に読経が続いている
          というのに席を立ち式場を出ていく。

◇ 同・受付(夜)
          香典の額を確かめている会計係男女二人のところへくる
          雄二。
  会計係男 「まだお式中じゃ‥‥」
  雄二   「(遮って)いくら集まってる?」
  会計係女 「まだちょっと‥‥」
  雄二   「貸せ!」
          雄二、計算途中の香典を強引に奪い取り札の枚数を数え
          始める。
  雄二   「ンだよ、たったこれだけか。ふざけんな。お前らちょろまか
       してないだろうな!?」
  会計係男 「とんでもない!」
  雄二   「フンッ!まあいい」
          唾を吐き金を持ってその場を後にする雄二。
          会計係の男女、呆れて顔を見合わせる。

◇ 同・人気のない場所(夜)
          人相の悪い男二人に卑屈な調子で金を渡している雄二。
  人相の悪い男A「55万ね‥‥ガキの葬式だとたいして香典集まんねぇな」
  雄二   「今月はこれでなんとか‥‥」   
  人相の悪い男A「しようがねぇな。で、おっさんよぉ、来月はどうやって
       返済するんだ?」
  雄二   「それはまた考えますから‥‥」
  人相の悪い男B「保険かけとけば良かったな、ガキにさ」
  雄二   「ホント、そうですよね。でも、まさか死ぬなんて思ってなか
       ったもんですから」
  人相の悪い男A「そりゃ、そうだ。ま、次はおっさんが自殺するか?保険
       かけてよ!」
  雄二   「アハハハ、ご冗談を!」
          人相の悪い男B、雄二の肩を抱え込み。──
  人相の悪い男B「(ニヤけて)ま、これがまんざら冗談でもないんだけどな
       ぁ」
  人相の悪い男A「残金1682万。どうやって返してもらえるか楽しみにし
       てるよ(人相の悪い男Bに)行くぞ」
          人相の悪い男B、雄二を突き放す。
          その拍子にその場に尻餅をつく雄二。
  人相の悪い男B「いつでも相談にのるからね。じゃっ!」
          その場を去る人相の悪い男AとB。
          雄二、その後姿を見送ってから乾いた笑いをこぼし立ち
          上がろうとしたところに。──
       「おじさん‥‥」
          ──と、声がかかるので必要以上に驚いて再び尻餅をつ
          く。
          声をかけたのは、たけし。
  たけし  「‥‥(遠慮がちに)カッちゃんのお父さん?」
  雄二   「な、何だ!?子供か!?驚かすんじゃねぇ!」
          立ち上がり体裁を繕う雄二。
  たけし  「すいません‥‥あの、僕、カッちゃんの友達で中原っていい
       ます」
  雄二   「(適当な感じで)ああ、そりゃどうも‥‥今日は来てくれてあ
       りがとね」
          雄二、その場を去ろうとする。
  たけし  「あの‥‥」
  雄二   「何だよ。まだ葬式の途中なんだから」
  たけし  「すいません。でも‥‥」
  雄二   「だからぁ、何だって言うんだよ」
  たけし  「カッちゃんは何で自殺なんかしたんですか?」
  雄二   「は?」
  たけし  「どうして自殺なんかしたんだと思いますか?」
  雄二   「知るか!?」
  たけし  「でも、お父さんなら何か心当たりがあるじゃないかと思って
       ‥‥」
  雄二   「何だ!?このガキは!!」
  たけし  「さっきのお金‥‥借金ですか?」
  雄二   「お前、俺が克夫を殺したとでも言うのか!?ああ!!?」
  たけし  「そんなこと言ってません!僕はただ‥‥」
          雄二、まるで威嚇するかのようにたけしににじり寄る。
  雄二   「あのガキはな、勝手に死んだんだ!飛び下りてな!!」
  たけし  「だから!」
  雄二   「うるせーっ!!」
          雄二、叫ぶなりたけしをはり倒す。
  雄二   「お前らガキに何が分かる!?えっ!?」
          雄二、たけしの横っ腹を蹴る。
  雄二   「いつだって涼しい目つきしやがって!いつだって自分が全部正
       しいようなツラしやがって!」
          たけし、雄二の足にすがりつきとめようとする。
  たけし  「やめて下さい!」
  雄二   「離せっ!」
          食い下がるたけしを必死になって振り払おうとする雄二。
  たけし  「やめて‥‥やめろー!!」
  雄二   「クソッ!!こんなことならアイツらが言うように克夫に保険か
       けておくんだったよ!!クソッ!!」
          たけしを振り切った雄二は勢いそのままたけしに暴行を
          続ける。
          そこに、騒ぎを聞き付けた小島がやってきて。──
  小島   「ちょっ、ちょっと、お父さん!!峰岸さん!」
          小島、言いながらとめようとするが、雄二は小島にさえ
          拳を振るう。
  雄二   「センコウもグルかっ!?上等だ!来いっ!!」
          防戦一方の小島に、滅茶苦茶に身体を動かし暴力を加え
          る雄二。
  小島   「だ、誰か!警察!!警察を呼んで下さい!!」
          騒ぎはあっという間に大きくなり、いつの間にかたけし
          は蚊帳の外に置かれる。
          たけし、気をしっかりさせようと首を振る。
          次の瞬間、全ての音が消える。
          そして。──
          錯覚。
          時間がゆっくりと流れていく。
          目の前で繰り広げられている光景を信じられないたけし。
  たけし  「‥‥」
          たけしの中で何かが動く。
          たけし、大きく口を開け。──叫ぶ。
          ──が、その叫びは声にならない。

(つづく)

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