小説『バグ』

2007-01-10

バグ     6

 だけど、それっきり。カッちゃんの言葉の意味をまったく理解出来なかったボクは、「えっ!?」と、間抜けヅラで聞き返すのが精一杯で、カッちゃんは失望を隠そうとせず、「オマエなら分かると思ったんだけどなぁ」と呟いてから大きくため息をつくと、かったるそうに、ああいう動作を『緩慢な』、といううんだろうな、そんなふうにボクに背中を向けた。
どことなく力を感じない肩を落としたカッちゃんの後ろ姿は、とても寂しそうだった。こんなカッちゃんの姿を見たのは初めてだった。

「いや、違うんだ……」

その場を取り繕うボクの言葉など、宇宙の果てから大きな声で叫んでも地球に届かないくらいカッちゃんからは遠く、それっきり、カッちゃんとボクは小学校を卒業するまで言葉を交わすことはなかった。
正確に言えば、ボクは、何度かカッちゃんに話しかけようとした。
だけどカッちゃんは、ボクが話しかけようとするアクションを察知して、ものの見事にボクの口から言葉が発せられるのを遮り、今までとまったく変わらぬ様子で窓の外を見つめ続けた。

いや、違う。

カッちゃんは明らかに変わった。何かを思い出して微笑むことがなくなった。それまでは、一人でいることなんてヘッチャラであるかのように見えていたカッちゃんが、とても寂しそうに窓の外を見るようになったみたいに、ボクには感じられた。同時に、それはボクの責任であるかのように、臆病な心は締めつけられたんだ。

カッちゃんがボクに背を向けた瞬間から、カッちゃんとボクの間に存在する時間、空間、感情、その他一切すべてのものは絶対零度に凍りつき、凍りつき淀んだ塊は、えも言われぬ罪悪感となってひんやりとした冷気を放ち、暗く重くボクにのしかかってきたんだ。

「オマエも共犯なんだからな」
「オマエなら分かると思ったんだけどなぁ」

カッちゃんが放った言葉の意味。

本当はボクは知っていたんだ。
分かっていたんだ。

高橋を残酷に観察し続けるという密かな楽しみ。──

カッちゃんとボクの共通の愉楽。
そのことにおける『共犯』。

ボクは、「えっ!?」ととぼけたことで、意識の共有を求めて来たカッちゃんを傷つけ裏切った。

人は、自分が安穏な場所にいたいという無意識に、ほんの短いひと言で、錆びたナイフで深く抉るように平気で他者を踏み躙ることが出来る。

ボクは、ホントは誰よりも一番仲良くなりたかったカッちゃんを、錆びたナイフの矛先で、彼の胸の奥底を、蹂躙したんだよ。これは決してオーバーな言い方じゃない。だって、それ以来ボクの心がジャリジャリと変な音を立てるようになったからね。それが何よりの証拠だよ。
ボクは、世界中の誰よりも臆病な卑怯者に成り下がったんだ。
このことは、誰かがボクのことを気の毒に思ってくれて、仮に「そんなことないよ」と慰めの言葉で否定してくれたとしても、ボク自身のことはボクが一番分かっている。どうしようもない事実なんだ。

ボクはこの一件のあとも、遊んでいても本当はたいして面白くないクラスメートと、当たり障りのないバカ話に、アホづら下げて大笑いし、カッちゃんをあたかも空気のような存在として扱い、無視するふりを続けたんだもん。

随分長くなった。
ボク無駄話が多いから(苦笑)。

えーとね、これまで話して来たことが、言わばカッちゃんとボクの『エピソード1』ってトコかな。
『エピソード2』はね、カッちゃんとボクが中2になったところから始まる。

今度の話はもっとずっと長いよ。
だってカッちゃんが自殺するに至るまでの話だからね。

ちょっと……だいぶつらい話なんだ。ボクにとってはね。

でも……

ね、聞いてくれる?

(つづく)



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2007-01-04

バグ     5

  このとき、カッちゃんは、職員室に呼ばれ、先生にこってりしぼられた。噂で聞いたのは、カッちゃんは、「どうしてあんなことやったんだ」とか、そんな月並みな質問にはいっさい口を噤み、始終うつむいて反省しているかのようだったということ。

 でもね、ボクには分かる。こんなの嘘っぱちだ。このとき、カッちゃんは、うつむいて舌を出し笑っていたに違いない。どうして、ボクにそんなことが分かるのかって?そうだな……その話は、もう少ししてから話すよ。

 カッちゃんは、この事件以来、クラスのみんなから更に敬遠されるようになった。何を考えているか分からないという理由で、薄気味悪く思われるようになった。カッちゃんはますます孤立していった。だけど、不思議なのは、カッちゃんはその状況のすべてを受け入れ、孤立して寂しいというよりも、むしろその状況こそ望んでいたものだとばかりに時折窓の外を眺めては、ふっと笑みを漏らしていた。
 ある時に、ボクはカッちゃんのその笑みの理由を知った。
 カッちゃんが笑みを漏らすとき、その直前には必ず高橋を見ていた。そう、ウサギ殺しの真犯人である高橋のことをね。高橋もまたカッちゃんを見た。

 高橋が、カッちゃんを見る視線。──
 決まって助けを求めるような、息が詰まってとても苦しそうな目つき。──

 カッちゃんは、当然その視線の意味を知っている。知っていて、高橋がカッちゃんを見たとき、すぐさま、カッちゃんは、まるで撥ね付けるかのように、高橋から視線を外し、窓の外を見た。高橋にしか見えない分厚いバリアーを張るのは当然忘れない。そして、ひと呼吸置いて、微笑んだんだ。カッちゃんは。

 高橋は、たまらなかっただろうな。自分が「ウサギ殺しの真犯人だ」と言えれば、どれだけ楽になったことか。高橋は、間違いなくカッちゃんに、その手助けを求めていたんだ。だけど、カッちゃんは、その甘い感傷をいっさい拒絶し、窓の外を見て微笑むばかりだった。

 この時のボクはと言えば、カッちゃんにものすごい興味を持っていながら、つきあい方は以前と変わらなかった。つまり、まったく口をきくことはなかった。少しだけ変化があったとすれば、時々、カッちゃんの視線を感じたことだったかな。ボクが、視線を感じてカッちゃんを見ると、決まってカッちゃんはボクから目を逸らした。動作だけ見れば高橋に対するそれとまったく同じだけど、明らかに違ったのは、ボクを見ていて窓の外を見る時のカッちゃんには、ボクの思い込みかもしれないけど、なんとなく『恥じらい』を感じたんだよ。言葉を交わすことはいっさい無かったけど、ボクにはカッちゃんのその『恥じらい』が、とても感じよかったんだ。

 高橋に対してはすごく残酷なくせに、ボクには妙な恥じらいを見せるカッちゃん。── とても不思議なヤツだろ?

 三学期が始まったとき、高橋はクラスの誰にも何も告げずに転校していった。先生の説明では、両親の都合で、私立の小学校に通うことになった、という話だったたけどさ、これって、なんだかおかしい理由だよな。両親の都合で私立の学校に通うことになったなんてことがあると思う?

 嘘だ。先生も嘘をつくならもっと上手について欲しいよ。

 高橋は、間違いなく「ウサギ殺しの真犯人だ」と告白する勇気がなくって、学校に通うのが苦しくなって、なによりカッちゃんの視線と微笑みが怖くなって、親に「学校を変わりたい」と泣きついたに違いない。「イジメられているんだ」くらいのセリフを口にしたことは想像に難くない。だけど高橋が自分をいじめている相手の名前を口にすることは絶対にない。それは、イコール自分の罪を告白しなければならないハメに陥りかねないからな。そんな勇気があるはずもない高橋は、素晴らしく素敵な悲劇のヒーローに自分を仕立て上げたんだろう。

なんとも滑稽で惨めで憐れ。かわいそうなヤツ。
出て来た鼻水が引っ込みもしない。

もちろん、これは全部ボクの推測だよ。だけど、それが案外的外れでもないのが証拠に、引っ越しもせず、ひとつ隣の駅に通うようになった高橋は、クラスの誰かに会うと、逃げるようにして姿を消そうとしてたからね。

 ボクは、高橋の転校を知ったカッちゃんは喜ぶのかと思ったけど、意外にも意外。カッちゃんはね、まったくその逆で、とても詰まらなそうにしていたんだよ。

で、高橋が転校してから一週間くらいしてからだったかな。
なんと!
カッちゃんがボクに話しかけてきたんだよ。

「せっかく面白かったのに……。オマエも共犯なんだからな」

ってね。

これが、カッちゃんとボクが初めて交わした言葉だったんだ。

(つづく)




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2006-12-26

バグ     4

 そりゃぁさ、いまどきはウサギが殺されるくらいどうってことない事件さ。だけどね、発見当事者の気持ちになってみてよ。頭ではたいしたことないって思っていても、やっぱりびっくりしたよ。それに……今からボクが言うことで、ボクを軽蔑しないでね。ボクはさ、真っ赤な血に染まったウサギの死骸を見て、とても気持ち悪くなっちゃったんだ。吐いた。自然と胃の底から、その日の朝食べた納豆や、シャケ、トースト(納豆にトースト!?って思った人、軽ーく流してください・笑)が逆流して来た。
 どんな動物だって、『死』ってさ、厳かなもんだって思うんだよ。けどね、目の当たりにしてしまうと、もっと……なんて言うか、とてもリアルで、頭で考えたそんな言葉なんて役に立たないほどに、五感をすっげー刺してくる。『死』ってね、こんなもんだと思う。直視するにはやっぱり辛い出来事なんだよ。だから、人は『死』に直面すると涙が出て来てしまうのかもしれないな。悲しいから泣くってこともあるかもしれないけど、きっとそれ以上に、自分の中に沸き上がってくる感情や、観念、生理的なものを処理しきれなくなっちゃうから、涙が出てくるんだって、ボクは思うよ。

 あーあ、また話がだいぶ逸れた。ボクのいけない癖だな、これは。すぐに話が変な方向に行っちゃう。(苦笑)許してね。

えーと、なんだっけ?……そうそう、ボクが話しているのはカッちゃんとのこと。それを忘れちゃいけない。
で、ウサギを殺したのは誰かって話になるんだな、ボクの中では。

 実はね、そのとき、ボクには犯人がすぐに分かったんだよね。
 事件が起きた日の帰りの学級会でさ、お決まりの犯人探しのようなことになったんだ。もちろん、それはボクのクラスだけじゃなくって、全校的に、その日の学級会の話題はウサギ殺しについてだった。学級会の前の休み時間にね、ボクは気づいてしまったんだ。同じクラスの高橋の胸にいつもあった校章のバッチがなくなっていたことにね。
 ボクが、何気なく「校章ないじゃん」って聞いた時の高橋の動揺っぷりたらなかったな。まるで漫画みたいに分かりやすく慌てていた。その瞬間、ボクは高橋が犯人だって確信した。けどね、ボクは、それ以上高橋を問いつめたりしなかった。だって、ボクは刑事じゃないからね。犯人を挙げることに興味はない。それよか、なんでウサギを殺したのか。ボクの高橋に対する興味はそっちのほうが強かったんだよ。だから、黙ってた。ボクは、事件を起こしてしまった高橋を、意地悪く観察することにしたのさ。だってさ、事実が白日のもとに晒されたって、高橋がかわいそうなだけで、なによりも、それって面白くないじゃん。

 だけどね、そんなボクの高橋に対しての興味は学級会の時に起きた、ボク以外は、その事実だけしか受け止められなかったであろう小さなアクションによって、まったく殺(そ)がれてしまったのさ。

「犯人はボクです」

と、言って堂々と手を上げたカッちゃん。

 この小さなアクションの真実を知るのは、ボクだけ。カッちゃんは、明らかに嘘で自分がウサギ殺しの犯人だと手を挙げた。それが証拠に、びっくりしてカッちゃんを見たボクを、カッちゃんは目で「黙ってろ。何も言うな」と、合図を送って来た。

分かる?この意味。

あ、間違って欲しくないのは、カッちゃんは決して高橋を庇おうとして、自ら濡れ衣を着たわけじゃないんだよ。

それだけは言っておく。

(つづく)




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2006-12-20

バグ     3

カッちゃんとボクの出会いは小学5年のとき。

いつもひとりで窓の外ばかり見ていて無口で特に仲のいい友達もいなかったカッちゃんとボクは、飼育小屋のウサギが殺されるという、小さな、だけどボクたちにとって衝撃的な事件が起こるまでは、ひと言も口をきいたことがなかった。単なるクラスメートというだけ。いや、ボクにとってカッちゃんは、それ以下の存在だったかな。

カッちゃんは、あえて自分からクラスのみんなと交流を持とうとしていない風だった。時々、そんな様子を見かねたおせっかいな女子が、カッちゃんに話しかけたりしていたみたいだけど、会話が長くつづいていたためしはなかったな。でね、ボクの感覚で言えば、そんなのはとても耐えられない。だって、学校にいるあいだじゅう誰とも口をきかないなんて!想像出来る!?それってさ、自分がそのクラスにいないのと同じようなものだろう。ボクは、そんなの耐えられない。ウサギは寂しすぎると死んじゃうって言うけど、まさしくボクは、ボクらは、それと一緒。いつだって誰かとふざけたりバカ話をしていなければ、不安で、いてもたってもいられない。でしょ?

そんな中でカッちゃんは、ボクらにとってフツーじゃなかった。異彩を放っていた、って言うんだろうな。あの感じは。常に近寄りがたいオーラを放っていたんだよ。そのオーラが何かっていうのは、その時は分からなかった。ってか、その時は知りたいなんて思わなかったんだよ。

でも、それってフツーじゃない?

誰だって関心のない人やモノに対しては驚くほど無関心じゃないか。遠い海の向こうで戦争が起きていて、たくさんの人たちが飢えたり死んだりしていたって、ボクらは笑いながら食べ物を残して平気でいる。だってボクらを取り巻く環境は平和なんだもの。
そうだな……。ボクらはきっと一人きりでいられるカッちゃんが怖かったのかもしれない。でもって、その怖さから逃れるために目を背け、見えない振りをしていただけなのかもしれない。それが楽だからね。

話がだいぶ逸れたな(苦笑)。元に戻そう。

つまりボクにとってカッちゃんはいなかったも同然だったっていうことさ。
遠い海の向こうで戦争が起きているくらいにね。

飼育係だったボクが、ウサギ小屋で、けっして寂しさから死んだのではない真っ赤な血に染まったウサギと、校章のバッチを見つけるまではね。

(つづく)




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2006-12-11

バグ     2

 カッちゃんとのことを思い浮かべた時、真っ先に蘇るのは、あの夏の日の出来事。
 日本中にどこにでも転がっていそうな夏休み最後の1日の出来事。
 カッちゃんと、ボク。峰岸、沢渡、村野、深草。十四歳のボクらは、十四歳らしい夏休みの1日を過ごしていた。江ノ島に海水浴に行き、その胸の膨らみにもっとも関心を持っているくせに、水着姿の女の子を横目で見ながらも、もじもじするばっかりで声をかけることなんて出来ず、だけど、そのくせ仲間同士の会話では、知ったかぶりをして、村野なんかもう既に経験済みみたいなことを言ってた。もちろんボクたちは村野が嘘をついているなんて、とっくの昔に知っていた。でも、精一杯知ったかぶりをして女体の神秘についてとくとくと語る村野はとてもアホみたいで楽しかったから黙って聞いていた。
 ってか、黙ってはいなかったけどね。ボクらは、適当に村野のプライドをくすぐり、嘘で塗り固められた『ケーケンダン』に、更に嘘の上塗りをさせて喜んでいた。
 楽しければ何でもいい、みたいな、そんな感じ。
 夜には、「ざっけんなよ!なんで今日で夏休みが終わりなんだよ」、「宿題やってねー」なんて、文句をたれながら、花火をやったっけ。当然、火のついた花火を振り回して、降り掛かる火の粉に熱がりながら、ね。
 
 話がだいぶ逸れた。元に戻そうね。

 でも、なんでだろう?
 なんであの日のことが真っ先に脳裏に浮かんでくるんだろう。
 そうだな、ボクらは……。
 
 あの頃のボクらは、永遠を信じて疑わなかった。いや、そもそも、永遠なんてこと考えもしなかったし、毎日が当たり前に過ぎていくのが当然だと思っていた。
 現実も嘘もごちゃ混ぜで、人の痛みなんて想像もしたことがなかった。無知で、故に不安を抱え、ひとりぼっちになることを恐れ、優しさが恥ずかしかった。

 あの頃のボクらは……ボクは、どうしたかったんだろう。

(つづく)



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2006-12-05

バグ     1     プロローグ

 しょせん、ボクなんかとるに足らないちっぽけ存在だなんてことは、ボクが生まれる百年以上前から決まってたことだし、冬の朝、自転車をこいでて耳がちぎれそうになるほど痛いみたいな、いや、ちょっと違うな、なんて言ったらいいんだろう?
ボクは……。
つまり、こう言いたいんだ。
ボクらは、大いなる不感症で、人が弱いってことから目を逸らして、自分が偉いと思い込んでいる愚かな虫にしか過ぎないってことをね。
ふむぅ……こう言っちゃうと虫に失礼だな。例えだよ、例えて言うならばってこと。ボクらは、考えているようで実は何も考えていない。本能のままに生きているだけだ。それをね、否定も肯定もしないってこと。分かるかな?
ただね、ふと思うんだ。
それって、突然、幽体離脱したみたいに自分を眺めてしまったときにさ、そういう瞬間ってあるでしょ?
でしょ?
そのときにね、ホントに凍り付いた耳に感じる痛さより、もっと痛烈に刺さるってことをね。
自分の愚かさを分かってしまう瞬間。
こりゃ、痛いよ。マジ、刺さる。

ボクは、きのう十四歳のまま二十二歳になった。
わけ分かんないだろ?(笑)
でも、この言葉のままなんだ。
そして、知ってしまったんだ。
自分が愚かな虫だったってことに。

十四歳で二十二歳のボクは、知った。
すべてが現実で、すべては夢だってことに。

十四歳で十四歳だったボクは、よくいるいじめっ子だった。
正確に言えば、仲間外れにされるのが怖くって、いじめっ子たちの周辺にいる気の弱い少年だった。
だけどね、こいつがくせ者なんだよ。
ボクは自分を気の弱い少年って自己弁護しているだけだった。一番最悪なのは、ボクみたいなヤツ。気が弱くって、ヘラヘラ笑ってて、本当は悪いことだって分かっているのに見て見ぬ振りをするヤツ。虫ほどの勇気も持ち合わせないヤツ。

ねぇ、こんな卑怯なボクの話を聞いてくれるかな?

ボクはね、みんなにカッちゃんの話を聞いて欲しいんだ。

カッちゃんは、自殺したんだ。

でもね、勘違いしないで欲しいのは、カッちゃんはさ、いわゆる『いじめっ子』だったんだよ。

(つづく)




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