シナリオ『電影マニアックス』15・最終回
95 フェードインして。──
重そうな鉄の扉を写した画面に、『2006年 4月』と書
かれたテロップが浮かび上がる。
テロップフェードアウトして、パンされた画面に『××
刑務所』と書かれた看板と姿勢正しく立つ刑務官の姿が
見えてくる。
ケンイチの声「もうそろそろ出てきてもいい頃なのですが‥‥約
束の時間はとうに過ぎてます。あっ!」
鉄扉の向こうから坊主頭のミチロウが姿を見せる。
恭しく刑務官に挨拶をすると(ケンイチの方に向かって)
歩いてくるミチロウ。
ミチロウ、途中で(カメラを構えているケンイチに気付
き)一瞬立ち止まるが、はにかんだような笑顔を浮かべ
再び歩き出す。
画面の中でバストサイズくらいになり立ち止まるミチロ
ウ。
ミチロウ「わざわざ来てくれなくっても良かったのに」
ケンイチの声「何言ってんだ。こんな大事な日に」
「ほら」とケンイチの声がして、ミチロウの前にビデオ
カメラが差し出される。
ビデオカメラをじっと見つめるミチロウ。
ケンイチの声「何だ?」
(ことあとは別のカメラによってフルサイズで捉えられ
た二人の映像になり)ミチロウ、やんわりとビデオカメ
ラを差し戻す。
ケンイチ「どうした?」
ミチロウ「色々考えたんだ」
ケンイチ「何を?」
ミチロウ「俺‥‥ビデオカメラはもういらない」
ケンイチ「えっ?」
ミチロウ「もう終わったんだ」
ケンイチ「ミチロウ、お前‥‥」
そのケンイチの声を遮るように、どこからか「カーッ
ト!」と大きな声が聞こえくる。
固定されたカメラの画面の背後から女がフレームインし
てきて二人に近づいていく。
女は。──
ミチロウ「(ケンイチカメラの映像)母さん!」
(固定カメラの映像)タエコ、黙ったままケンイチからビ
デオカメラを奪い取りスイッチを入れると戸惑うばかり
のミチロウに渡す。
タエコ「(有無をも言わせぬ迫力で)はい!ミチロウ、構えて」
ミチロウ、条件反射的にビュワーを覗き込むとタエコ
にレンズを向ける。
(ミチロウカメラの映像)にっこり笑うタエコのアップ。
タエコ「ミチロウ、あんたね、今のじゃNGよ」
ミチロウ「(ケンイチカメラの映像)ちょっ、ど、どういうこと?」
タエコ「(ミチロウカメラの映像)だからぁ、セリフがNGなの」
ミチロウ「(ケンイチカメラの映像)セリフって‥‥」
タエコ「(ミチロウカメラの映像)何が『もう終わったんだ』、よ。
ふざけないで」
ミチロウ「(ケンイチカメラの映像)わけ分かんないよ!」
タエコ「(ミチロウカメラの映像)何も終わってないのよ。これか
らじゃない」
ミチロウ「(ケンイチカメラの映像)えっ?」
タエコ「(ミチロウカメラの映像)これから始まるんだから」
(固定カメラの映像)踵を返し(固定カメラの方へ)小走り
で戻って来るタエコ。
タエコ、画面の背後に回り込み。──
タエコの声「じゃ、もう一度、やり直し!」
ミチロウ「(ケンイチカメラの映像)何を!?」
画面、カットアウト。
(おわり)
……さて、ブログの読み物としては長々と綴ってしまいましたが、
最初から最後まで読んで頂けたでしょうか?
もし、そんな貴重な方がいらっしゃいましたら、是非、コメントを下さいね。
そして、全部を通して再読する方はカテゴリー『電影マニアックス』を
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また、もしももしも映画関係者の方、はたまたお金があって
映画を作りたいと思ってらっしゃる方でこれを読まれた方がいて、
『面白いっ!』と感じて頂けたら、是非ご一報ください。
それから、僭越ではありますが、拙著『不機嫌な天使』を
お買い求めいただけたら嬉しゅうございます。
よろしくお願いします。(切なお願い・笑)
| 不機嫌な天使 著者:長濱 英高 |
なお、シナリオ『電影マニアックス』の著作はすべて長濱英高に帰属します。
盗作などがありましたら、法的手段に訴え出ることも辞さない所存です。
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